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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
そして父である山の神はそれを大層喜び、多くの献上品と共に娘達を天津神へ送り出すことを決めた。
(……え?)
──娘達。
そう……その女神には、姉が在った。岩の女神だった。
山の神は花の女神にてその天津神の繁栄を、岩の女神にてその御代の磐石たることを願い、二人を添えて男神の元へ嫁がせたのだ。
だが……神依はそこで、その最も美しいはずだった天津神……天孫日嗣の、剥き出しの傲慢さと卑劣さ、その欲望と……今も消えぬ罪と淀の正体を、目の当たりにした。
***
……その岩の女神は、妹である花の女神とは似ても似つかない……醜い容姿をしていたのだ。
日嗣はそれを畏忌(いき)して父元に送り返し、花の女神だけを自らの腕に留め、一夜の契りを結んだ。
(……日嗣……様)
日嗣様、と神依は真っ白に弾けた頭の中で意味を成さずその名を呟く。
確かに……あの優しい指先は更に優しく、自分とは比べ物にならないくらい、その女性を慈しんだのだろう。
しかしそれは……男神が忌み嫌ったものより遥かに、遥かに酷く醜い……間違いを犯した末の、不誠実で、形無き刃のような指先で成された交わりだった。
(……え?)
──娘達。
そう……その女神には、姉が在った。岩の女神だった。
山の神は花の女神にてその天津神の繁栄を、岩の女神にてその御代の磐石たることを願い、二人を添えて男神の元へ嫁がせたのだ。
だが……神依はそこで、その最も美しいはずだった天津神……天孫日嗣の、剥き出しの傲慢さと卑劣さ、その欲望と……今も消えぬ罪と淀の正体を、目の当たりにした。
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……その岩の女神は、妹である花の女神とは似ても似つかない……醜い容姿をしていたのだ。
日嗣はそれを畏忌(いき)して父元に送り返し、花の女神だけを自らの腕に留め、一夜の契りを結んだ。
(……日嗣……様)
日嗣様、と神依は真っ白に弾けた頭の中で意味を成さずその名を呟く。
確かに……あの優しい指先は更に優しく、自分とは比べ物にならないくらい、その女性を慈しんだのだろう。
しかしそれは……男神が忌み嫌ったものより遥かに、遥かに酷く醜い……間違いを犯した末の、不誠実で、形無き刃のような指先で成された交わりだった。