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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
 ……割かれた姉妹の心はいかばかりのものだっただろう。
 ただ一人送り返された姉神は? 
 それをなすすべもなく見送り、その残酷な男神の胸に抱かれた妹神は?
 (…………)
神依はこれによく似た感覚を、すぐに思い出した。
 ……それはとても恥ずかしくて、悲しくて、どうしていいか分からないもの。頭の中が真っ白に凍り付いて、それと同時に情けなさで涙が浮かぶ。男の心が、空気が、歪む間も無く同じように凍り付いて、それが融解した瞬間には引き潮のように一気に退いていくのが分かる。
 ──だから嫌だと言ったのに。
 ──信じていたのに。あなたの優しさを信じていたのに。
 ──やはりこんな汚ならしい、穢れた身で愛を望むべきではなかったの? 罪だったの?
 ──だけれど私は、あなたのためならどんなふうにも変われたのに。
 ──ただ待っていてくれさえすれば、ただ待っていてくれさえすれば……。
 「なぜ愛しき我が背が、私にこのような辱しめをお与えになるのですか……」
 原初の男神の流れを汲むその美しい男神はまた、その心奥にある黒い淀までもを受け継いでいた。
 そして始祖と同じように……剣の振舞いしか成せぬ男神は、その刃先を今度は花の女神へと向ける。
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