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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
花の女神は、その契りによって子を孕んでいたのだ。
そして、天孫たる日嗣の……公の子として生むことを望んだ。
しかし、
『──お前は、ただ一夜の契りで私の子を孕んだというのか。……それは真に私の御子であるのか。他の国津神の子ではないのか』
男神は一夜で結ばれ、十月十日を待たずして成った子に女神を疑い、それを責めた。
しかし、物から……或いは仕草からでも命を成せる神世に、それが何の意味をなしただろう。
女神はその雨風に散らぬ凛々しさをもって潔白を訴え、
『──国津神の子なれば無事には生まれず、天津神たる貴方様の子なれば、何があろうとも無事に生まれてくるでしょう』
と誓(うけ)い、すぐに窓や扉に土を塗り固めた戸口の無い産屋にこもると火を放ち、その炎の中で出産をした。
(……っ)
それはあまりに凄絶で、信念に殉ずるような……吐き気がするほど尋常ではなく、同じ女として畏れかしこむような、身の振り方だった。
神依にはできない。
矮小な自分にはできないからこそ……かしこみ、膝を折り、項垂れるように頭を下げる。涙を溢す。
……それを目の当たりにした男神は何を思っただろう。
子は無事に、“生まれてしまった”。三人の子。
そして、天孫たる日嗣の……公の子として生むことを望んだ。
しかし、
『──お前は、ただ一夜の契りで私の子を孕んだというのか。……それは真に私の御子であるのか。他の国津神の子ではないのか』
男神は一夜で結ばれ、十月十日を待たずして成った子に女神を疑い、それを責めた。
しかし、物から……或いは仕草からでも命を成せる神世に、それが何の意味をなしただろう。
女神はその雨風に散らぬ凛々しさをもって潔白を訴え、
『──国津神の子なれば無事には生まれず、天津神たる貴方様の子なれば、何があろうとも無事に生まれてくるでしょう』
と誓(うけ)い、すぐに窓や扉に土を塗り固めた戸口の無い産屋にこもると火を放ち、その炎の中で出産をした。
(……っ)
それはあまりに凄絶で、信念に殉ずるような……吐き気がするほど尋常ではなく、同じ女として畏れかしこむような、身の振り方だった。
神依にはできない。
矮小な自分にはできないからこそ……かしこみ、膝を折り、項垂れるように頭を下げる。涙を溢す。
……それを目の当たりにした男神は何を思っただろう。
子は無事に、“生まれてしまった”。三人の子。