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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
 神依はやがて、見慣れた淡島の風景の中に戻っていた。
 そしてその景色に混じる日嗣は、いつも一人で身を隠すように淡島のどこかにいた。
 高天原にも戻らず、日がな一日なにをするわけでも無く……政にも祭事にも一切関わらず、神故に無限にも等しい時間を、瞳に海を映すことだけに費やしていた。
 (……日嗣様は……)
子を一度でも、その腕に抱けたのだろうか。それを許されたのだろうか。
 毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、膿むような時間海の向こうを眺めて、何を想っていたのだろう。
 ……常世の国があるという、その見えない世界に我が子を想っていたのだろうか。
 自らの過ち故に、花の如く短命となってしまった子孫達を、想っていたのだろうか。
 或いは……泣きたかったのかもしれない。
 しかし灼かれた魂はそれさえもさせてくれなかった。
 だから、代わりに海を映して。
 今度は自分自身に、その見えない刃を突き立てていった。

***

 しかしそんな憂いに満ちた男神はやがて、淡島の巫女……女達に取ってはまたひどく儚く、それ故に硝子細工のように美しいものに……見えてしまうようになった。愛された者、生む者としての怒れる母の性は、永い永い時の末に忘却され、愛し、求める女の性へと廻っていってしまった。
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