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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
 それは愚かなことだろうか。
 神依に判じることはできない。神依もまた、同じだった。
 女達はその器と衣に恋焦がれてはすがり、愛の言葉を囁く。
 日嗣が紛れるいずれも人目に付かない場所で、女達はその身と心を晒してすがり、愛欲の言葉を強いる。

──お願いします……どうか、私を。一夜限りでも、どうか私をお美しい貴方様の眼にお映し下さい。
──貴方様のためなら、乙女にも売女にもなりまする。ですからどうか私を、高貴で秀麗な花に添う蝶として飼って下さいませ……。
──今となっては誰よりも高潔で見目麗しいあなた様……あなた様のものになれるのなら玉も衣も、またこの身の純真さも要りませぬ。どうぞ唇を吸って、肌を噛んで──この乳房も女陰も、全てあなたのお好きなように──

(…………)
日嗣はそうして、自身が犯した間違いそのままに、女達に爛れた愛情を寄せられていった。
 そして日嗣はそれを……醜いと思う。しかしそれは、諸刃の剣だった。日嗣に彼女達を罵る資格は無い。だから日嗣は奥歯を噛み、腕に抱くことは無けれどすがる腕を振り払うこともできず、今度は女達から向けられた見えない刃先を受け入れていく。そしていつしか恋を嫌い愛を疑い、誰にも心を寄せなくなった。自らを含め、憎しみさえ覚えるようになっていった。
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