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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
「……だけど……ッ、……だけど」
『……いいの。それでいいのよ。命は二人で生み出すもの。その源である恋の芽も、二人でなければ育たない』
「……」
 神依は顔を上げ、穏やかに笑む自身の顔を見る。
「どうして……私なの?」
『……』
その問いに、女神は答えてはくれなかった。ただにこりと笑って、また「涙を拭きなさい」とその仕草をしてみせる。
 そしてまた神依がそうすれば、どこか安心したようにその姿を揺らめかせた。
『……あなたは、約束を覚えてる? あの子は覚えてるわ。信じて……お行きなさい』
「約束?」
不思議そうに目を開く神依の前で、ざあっと花の香を混ぜた風が四方の景色を煽って揺らす。
 そしてそれが収まると足元が一面の荒れた昏い雲海に変わり、その上に神依を花柱として花開くよう真白の蜘蛛の巣が一瞬で張った。
 『──あなたは、あの龍を』
「え……」
頭の中で、更に別の女性の声がする。
『飴を、ありがとう』
(……あなたは)
そして神依の意識は、再び水に落ちた。
 一糸も纏わぬ姿のまま、水に落ち……形無きものを絞め殺さんばかりにぎちぎちととぐろを巻き、自らを絞め殺す首の無い龍を目の当たりにして……ようやく現(うつつ)に戻る。
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