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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
 そして肉体は日嗣の前でゆっくりと神楽鈴を拾い、五色布を綺麗に正した。
 「──神依……!!」
日嗣はそれに、酷く安堵し膝をつく。天つ台に膝をつき、揺らぐ視界にその巫女の姿を滲ませる。
 しかし日嗣の目に映った少女の瞳は“あの時”と同じ──
 夕焼けの雲海で向かい合った時と同じ、緋の色をしていた。
 神憑(かみがか)りだった。



【5】

 神依はその昏くどろどろとした雲海の底で、今にもそれに呑まれそうな……白く煌めく、丸いものを、淀ごとすくいとる。首の無い、龍の根。
 そしてそれをいとおしむように頬に寄せ、謝罪した。
「……ごめんなさい。私も……結局は、みんなと同じ。ただ必死に、あなたを想うことを言い訳にして……それに甘えていた」
 その泥はほのかに温かく、……また、優しかった。優しく神依に添い、応えてくれた。
『……知っている。しかし私は、それでも良かった。良かったのだ。本来祈りというものは、人が神にするものも人が人にするものも……そして神が人にするものも、全てが一方通行で、身勝手なものだ』
「……」
『だがそれでも、花を捧げてくれた。……あなたの祈りは偽善であり、偽物だったかもしれない。しかしあなたの優しさと努力は、本物だった』
「あ……」
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