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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
 小さな光は手の中の淀までもを包み込み、その光の輝きを増す。
『……故に私は神として、地をかきむしるあなたの前に膝を折り、またその祈りを乞いたい』
「……」
『……私はあなたに罪を犯した。私を想ってくれた、天つ日嗣の御座(みくら)の神にも罪を犯した。あなたの同胞にも罪を犯した。この世界にも罪を犯した。それでも……あなたはまた、あの可愛らしい花藻を私に摘んでくれるだろうか』
「……うん。また……赤い椿の花と、名前も知らない穂と一緒に」
『ああ……。……ありがたい……』
 私はまだ、神でいられる。
 その囁きと共に、やがて神依の視界が真白に染まる。神依はそれに安心して、自身もその光に身を委ねた。
 どこかで美しい、鈴と……笛の音が聞こえる。
 それは荒ぶる龍の魂と、沈んだ自身の魂を包み和とする。
 まるで揺りかごのような、音色だった。

***

 ……しゃあん、と涼やかな鈴の音が空に響く。
 そしてその空から、今度はそれを導くように嫋々とした笛の音が天降る。
「……」
広場に残された誰もが宙で舞う巫女を畏れ、指一本動かせなくなった。その眼差しさえ、動かせなくなった。
 あの巫女は今、神の御技をもって神として舞っている。
 ──神依。
 ……神依様。
 ──神依……!
幾つもの声が、音も無く重なる。
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