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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
 ふわりと花の香を混ぜた風が流れる。それに男神の髪が靡き、二人の白き衣が絡み合う。
 水や花や葉や……巫女の舞を依りに円を成していたものは、その力を失いゆっくりと海に落ちていく。
 日嗣はそんな彩りの中、気を失った神依を跪くようにして抱き留めた。
 そしてそのまま、己が威光を示す天照より与えられた剣を宙に突き立てると……僅か数分前まで池があったその地に向かい、口を開いた。
「──高天原に神留り坐す親神魯企、神魯美の命以ちて──八百万の神等を神集え集え賜い、神議り議り賜りて、天つ璽の剣、玉を捧げ持ち、天降りて豊葦原の高御座に坐す天つ日嗣の皇子が鎮詞を称え奏す──」
 その力強い詞と共に、二人の周りの水と風がざわざわと揺らぎ、興る。
 人々が見た水の鱗はその天津神に向かい、うねり、そして未だ水のままに、その御前に巨大な頭をもたげ、自らの尾を咬むように丸く円をなして現れた。
 日嗣は神依が見てきた神々の物語を謳う。そしてその龍神に命じる。
 火傷によって命を落とした女神を癒すように。
 穢れた心身を禊ぎ……しかしそれでも消えぬ男神の罪を灌ぐように。
 それほどに美しい水別ける川の神となって、斎(いつ)くようにと。
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