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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第2章 神隠しの行く末
 『──…天孫の皇子か。感謝する……。いずれ千年の時を経て気高き龍神となろう我らが、穢れを纏い人欲にまみれ、神の雛を汚すとは……』
「謝辞は不要なれば。未だ千年に至らずとも、水霊たる貴殿の首を刎ねるは紛いもなく神殺し。御霊(みたま)はいずこかの水辺にて、私自ら奉り申し上げる」
『ああ──そうか……。御身自らとは……どのように転じるか、楽しみだ……』
最後の方は絞り出すようにか細く、それきり小さな龍は何も発さず、静かに息を引き取った。
 ただ少女には、その潤みを帯びた真黒い瞳が自分を見たような……そんな気がした。
 そしてそれを見届けた日嗣は、懐から紙を取り出しその骸(むくろ)を丁寧に包む。それから手首に巻かれていた、筒型の玉が連なる緒をほどくと包みに巻き付け、きつく結んだ。
 面の男は未だ手に在る捻れた蛇を見ながら立ち上がる。
「んー、残ったコイツは上に持って行って祓ってもらってみるか」
「時間はかかるだろうがな……。それにしてもまさか、水蛭子(ヒルコ)が襲われるとは」
(……ひるこ? 襲われるって……私のこと?)
 立て続けに起きた出来事に、ぼやけた思考でその意味も理解出来ないまま一部始終を傍観していた少女は発する言葉を持たず、ただ黒い染みが広がる砂をぼうっと眺めていた。
(……かみさま……?)
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