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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第2章 神隠しの行く末
 淡々とした話し方も加えれば、その内面を測ることは日嗣以上に難しいかもしれない。
 その日嗣は日嗣で、先程までの自分のように完全に傍観者の位置に収まっているし、もう言葉を交わすことも無いのかと眉を下げれば、それを不安と見てくれたのか女性が労るような笑みで頭を撫でてくれた。
 「何ぞ禍津霊(まがつち)に転じた水霊に襲われたとか──ほんに、可哀想に。もう心配は要りませぬえ」
「……」
綺麗に紅が塗られた爪。それが汚れるのも構わずもつれた髪をといてくれるその指先に、お母さん、と小さく口の中で呟けば、女性は楽しそうにころころと笑い頷いた。
「そう思うてくれても何ら差し障りは無かろうて──。この洞に流れ着いた者は皆、赤子と同じ。
私も元は同じものなれど、今は年を経て永きに渡り、それらを世話し導く役を任されておる。故に洞主と」
「洞主……様。……流れ着いた?」
「そう。──まだ分からぬことも多かろうが、まずはゆっくり湯につかり休むといい。それも私の行き届かない分は、禊と弟分の童(わらべ)がそなたの手足となり致してくれる」
「……」
もう一度禊を見上げれば彼は肯定を表すように微かに頷き、また男の子を見れば少し照れ臭そうに目を泳がせて、それからにこりと笑った。
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