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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第2章 神隠しの行く末
 その人懐っこい笑顔と仕草に、少女もようやく顔をほころばせる。
 それを見た洞主も安心したように穏やかな顔を見せ、再び日嗣達に向き直ると頭を垂れた。
「それでは私共はこれにて。おかげさまで、また奥社も賑やかしゅうなりまする」
「ああ──ま、それで喜ぶ男神は幾らでもいるからな。単純なもんさ」
「ふふ、ほんに。御令孫も、たまには淡島の方にお出座し下さいませ。娘共もことに華やぎますゆえ。では」
「……」
最後に日嗣に拝し歩き出す洞主と、ちらちらと後ろを窺いながらそれに続く少年。禊もまた日嗣達に一礼だけすると、二人の後に続く。
 「──あ……待って」
しかし少女はあることを思い出してそれを止めた。まだ面の男に礼を言っていない。というより、名前すら聞いていなかった。
「あの、ごめんなさい。お名前……」
「ああそっか、まだ言ってなかったのか。コイツは日嗣で、俺は猿彦。よろしくな」
──と、そこまで言い置いて、面の男……猿彦は何か思い付いたように言葉を続ける。
「お前、俺が怖くないのか?」
「……え?」
少女は小首を傾げて、自分を見下ろす猿彦を見上げる。
 確かに、体は大きいし威圧感もある。日嗣とは異なる大振りの着物も鬣も、恐ろしい形相の面も最初は驚いた。
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