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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第3章 世界の理
 そういうものなのだろうかと漠然と頷き、ほうと息を吐く少女。“あわしま”というなら、きっとあの島々が天の海に浮かぶ沫(あわ)のように見えるからなのだと思う。雨上がりのような、水気を帯びる光と闇を孕んだ雲が頭上にも足元にも流れている光景は本当に不可思議なものだった。
 そしてその雲海の足場となるのは、形も不揃いな跳び石だけ。それが歪に連なり、鳥居の中心を貫いている。
 少女は身を乗り出して下を眺め、それから禊を見遣って呟いた。
「あの……、もしここから落ちたら、どうなるの?」
「落ちません。──一ノ弟(ひのと)」
「……!」
手持ちぶさたに体を揺らし、話を聞きつつ砂を蹴って遊んでいた少年は、兄貴分の禊に呼ばれぱっと顔を上げる。
 禊はその鳥居の方を見遣り、行けと顎で示す。少年はその意を察し、少女に向かってにかっと笑うと駆け出した。生え変わりか、乳歯の一本抜けた並びの歯。その年相応の身軽さで、一足跳びにぴょんぴょんと登っていく。
 なるほど確かに──あんなに小さな子が渡れるのなら、自分でもきっと大丈夫だと少女は思う。
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