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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第3章 世界の理
 最も足が立てばの話だが、そんなことを考えていれば上の方から「おーい」と子供特有の高い声が聞こえてきた。
「落ちたらきっと、さっきのお面の神様がすくってくれるよー!」
自慢気に手を振る男の子の言葉に、少女は禊を窺う。
「……やっぱり、あの二人は神様だったのね」
「はい。お二方とも、偉大な神々にあらせられます」
「……本当に助けて貰える? あと……、……重くない?」
「釣りが御趣味なそうなので竿に掛かれば。あとは、足が立つまでお気になさらず」
「ん……」
その後半の何とも言えない返事に若干のいたたまれなさを感じ、重さが変わる訳ではないが身を縮めれば高らかに声を上げて洞主が笑う。
「やはり水蛭子は水蛭子。頼るべき相手が誰か、もう弁えておる──。禊、自身の姫子可愛さに意地悪をおしでないよ。さあ、もう長居は無用。落ちる時は禊も一緒故、参りますえ」
 ──そなたの、本当の故郷へ。

***


 ぱちゃり、と──禊が踏み出した足元に、波が寄せ水の雫が弾け飛ぶ。
 (本当の……故郷……)
その言葉は、少女の中で不思議な反響をもたらし意識の芯を震わせた。
 そして、鳥居を一つ、また一つと潜るごとに体の中が空虚になっていくような心地になる。
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