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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第3章 世界の理
 否──…ただ一つ、女だということは分かる。まだ成熟していない、それでも……性に無頓着ではいられない年頃の女。そう改めて認識すれば、日嗣との行為に羞恥とむず痒さが沸き起こり体が熱く切なくなる。何か良くないものから助けてくれただけ、それだけだとしても──。
 ……しかし、後は何もない。
 断片的に覚えているのは水の中にいたこと。そして引き揚げられてからは、何度も……“ひるこ”と言われたことだけ。
 「……洞主様。あの……ひるこ、というのは何ですか? 私のこと……それが私の名前なのですか?」
「……うむ……折りを見て、少しずつこちらの理(ことわり)も覚えていかねばの」
おそるおそる少女が問えば、洞主はその足を止め神妙そうな表情で振り返る。そして数秒の後、再び緩やかに歩み始めた。
 「──“水蛭子”というのは名ではなく、この淡島で生まれ、ただしここでは肉体が成長せず……幼い内に川や海より異界に流された、魂の子のこと。こちらに戻りし時にはいつ誰より生まれたか、もはや調べる手立ても無いが……」
「な……流された?」
少女は驚きに目を見開き、しかし次の瞬間にはそれがどういう意味を持つのか理解してみるみる眉を下げうつむいてしまう。
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