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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第3章 世界の理
「ただ私にもあれにも、仮世の記憶は一切存在しておりません。捨てられたとも思いませんし、こちらに参った時……この空や海を見ても特に何の疑問も抱かず、ここはそういうものなのだと受け入れていました。それに──自然と理解もしていたような気が致します。ああ、ここが私の故郷だったと。そんなものです」
「そんなもの……」
言われてみれば、確かにそれが正しいのだろうと少女は漠然と思う。
 それは多分生まれたばかりの命の役目。小鹿がすぐに立ち上がるように、燕の雛が口を開けるように、まだ脆い亀が海に帰るように。
 そう──本来はそれで正しいはずなのだ。
「……じゃあ、私って変?」
「特異な漂着であったとは思いますが」
「なに──むしろそなたは運がいい。この淡島では、神々と縁を持ち神々に愛されることが何より幸いなこと。そなたは既に、二柱の神とまみえ言葉を交わした。そなたを流した本当の父母も、それを慶んでおりましょうて」
「……でも、……」
 本当にそうだろうか……?
 もしそういう生まれだとしても、海から異界に流されたのだとしても──きっとその異界にも父と母がいたはずだ。
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