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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第3章 世界の理
 見ず知らずの命に胎(はら)を貸し、命をかけて生み、短くはない時間を誠実に共に過ごしてくれた“育ての”父と母。
 今、事実を知った自分に取ってはそれは確かに本当の両親ではなかったかもしれない。しかし、両親の立場からしてみれば紛れもなく……自分は“本当の娘”だった。
 今、自分がここに戻ってきたら、その人達はどうなるのだろう?
 私は父と母に心から慈しんでもらえていたのだろうか。愛して貰えていたのだろうか。ならば尚更──その父と母は、悲しんでいるのではないだろうか。
 老いて死ぬまで、その間際まで。
 消えた娘を恨むだろうか。いや、それより残された人生の大半を使って自分達の何が悪かったのかを悩み考え、命尽きるまで自らの手で自らを苛み、その心を抉り取っていくのではないだろうか。
 (……私は二組の親に、とても不幸なことをさせてしまったかもしれない)
 もう顔も思い出せない。声も知らない。なのに考えれば考えるほど少女の目からはぽろぽろと涙が零れ、止まらなかった。
「……お父さん……、お母さん。お母さん……っ」
「……」
少女は子供のように小さく震え、首元でぎゅっと手を握りしめると……まるで本当に母を、その絶対の拠り所を求めるように禊の胸に顔を埋め、泣き始めてしまう。
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