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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第3章 世界の理
「……」
顔を上げれば、もうすぐそこに淡島が迫ってきていた。多島群でもある淡島の中で最も広い面積を持つその島は、日々の神事や集会を行い、或いは生活の憩いとなる──この世界の中心部。
鎮守の森に映える八尋(やひろ)の大社、檜の大鳥居。八百万(やおよろず)の神々に愛され、美しい水に育まれたあらゆる季節の花や実が繚乱する進貢(しんこう)の広場。
そしてその広場には、それら全てを見下ろすように──ひときわ豪奢な朱の楼閣が聳えている。
禊はそれを睨むように見上げ、しかしすぐに、日の光の眩しさに目を反らすかのように視線を落とし胸元の少女に語りかける。
「……もうすぐ淡島に入ります。広場には人目もあるでしょうから、顔を背けて寝たふりでもしていて下さい。泣いた顔を見られたいのなら別ですが」
「禊……さん」
「禊で結構です」
「……いいの?」
「はい」
「ん……禊──、禊。何だか私の中に、別々の二人の私がいるみたいで……なのに何だか、寂しかったの。……ありがとう」
「いえ」
言われた通り、少女はごしごしと涙を拭い禊の胸に額を寄せた。目をつむれば、隠そうとしてくれたのか更にぎゅっと身体を引き寄せられる。
顔を上げれば、もうすぐそこに淡島が迫ってきていた。多島群でもある淡島の中で最も広い面積を持つその島は、日々の神事や集会を行い、或いは生活の憩いとなる──この世界の中心部。
鎮守の森に映える八尋(やひろ)の大社、檜の大鳥居。八百万(やおよろず)の神々に愛され、美しい水に育まれたあらゆる季節の花や実が繚乱する進貢(しんこう)の広場。
そしてその広場には、それら全てを見下ろすように──ひときわ豪奢な朱の楼閣が聳えている。
禊はそれを睨むように見上げ、しかしすぐに、日の光の眩しさに目を反らすかのように視線を落とし胸元の少女に語りかける。
「……もうすぐ淡島に入ります。広場には人目もあるでしょうから、顔を背けて寝たふりでもしていて下さい。泣いた顔を見られたいのなら別ですが」
「禊……さん」
「禊で結構です」
「……いいの?」
「はい」
「ん……禊──、禊。何だか私の中に、別々の二人の私がいるみたいで……なのに何だか、寂しかったの。……ありがとう」
「いえ」
言われた通り、少女はごしごしと涙を拭い禊の胸に額を寄せた。目をつむれば、隠そうとしてくれたのか更にぎゅっと身体を引き寄せられる。