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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第3章 世界の理
 「お風呂がいっぱいあるね」
「──うん! あっちのお湯はすっげえ熱いから、少しずつこっちに流して温度を下げてるんだよ」
「へえ……」
ちょうど近くに来た少年に話し掛ければ、少年は少し驚いた顔をしたがすぐに笑顔に戻って浴槽を指で辿って教えてくれた。驚かれたのはまだ慣れないからだろうが、多分本当はお喋りで人なつっこい子なのだろう。
「ねえ、あなたは──ヒノトというの?」
「ううん、俺は“童”。禊も童も役割で、名前は無いんだ。だからヒノトは禊と童の間で使う名前代わりの呼び方」
「えっ……待って。禊って、名前じゃなかったの……」
「うん。だから逆に、俺は禊のこと一ノ兄(ひのえ)って呼ぶ。ヒはひいふうみいのヒで、一番。禊の階級な。トは弟でエは兄。本当の兄弟じゃないけど、兄ちゃんって感じ」
「……」
少女は目をぱちくりとさせ、こてんと首を傾げる。
 少しでも仲良くなれればと何気なく問うたことが、まさかこんな──これからの自分の生活に関わる重大な話に繋がっているとは思わなかった。
「じゃあ……私も名前がないから、そうなるのかな?」
「んー、と。ちょっと違う。ちゃんと試験みたいのがあって、選り分けられるんだ」
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