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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第3章 世界の理
「失礼ですが……それは、御令孫のお召し物でございましょう。これももしも……の話ですが」
「……何?」
「“朱印”──という言葉にお聞き覚えはありませんか」
「……!!」
「やはり……あるのですね」
思いがけない禊の言葉に、少女は感情を隠すのも忘れ目を見開く。それは少女の身に何が起きたか、禊と童が理解するには充分な反応だった。
 「ち……違うの、私……私」
二人の纏う空気が一気に変わり、少女は急に一人ぼっちになってしまったような気になってしまう。何とか言い訳の言葉を紡ごうとするがそれもままならない。
「一ノ兄……」
そして気まずそうに禊を見上げる童に倣い、窺うように禊を見れば……禊は伏し目がちに何かを考えていた。
 しかしそれもほんのわずかな時間。禊はすぐに顔を上げると、今まで通りの調子で言葉を続ける。
「──朱印とは本来、神々と心を……或いは肌を交わした者が神々より頂く神威──神の御力の欠片、或いは神々の息吹のようなものです。それは持ち主に加護を、或いは力を与える尊いもの。しかし──」
「……」
「私が知る限り、御令孫がそれを淡島の人間にお与えになったことは一度たりともございません」
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