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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第3章 世界の理
その時口からこぼれた一言に、少女は言葉通り穏やかに笑んだが、禊のことをよく知る童は少し驚いたように数秒動きを止め、それからまた何事もなかったかのように雑務に戻った。
 少女はそれを不思議に思ったが、ふとあることを思い付いて手招きで童を呼び寄せる。
「ねえ、童。……呼び方、童で大丈夫なんだよね?」
「うん、何?」
そして既に少女が気安いことを学んだ童は、今度こそ構えることもなく応える。
「さっきの続き。もしできれば、なんだけど……今度私にも作ってくれない? 勾玉」
「えっ……俺が? でも俺、見習いだし。巫女になれば、もっとうんと偉い匠が造った良いのがたくさん貰えるよ」
「ううん、でもあなたのがいい」
「……!」
少女がにこりと笑めば、童は頬を紅潮させて囁くような声でうん、と頷く。
 童は本来、赤子のように流れ着く水蛭子たちの、気安い遊び相手のような役割を持つ。だから彼らがこちらの生活に慣れてしまえば、禊の補助はすれどもほとんど必要がなくなる存在。
 だからその言葉は、たとえ少女が無自覚であったとしても……栄誉だった。
 そもそも童に取っては、件(くだん)の朱印の話でさえ今すぐ誰かに言いふらしたいくらいのもの。
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