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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第3章 世界の理
 しかし水蛭子という外部からの刺激が、善きにしろ悪きにしろ神の世に少しずつ影響を与えてきた。未だ共同体としての概念も色濃く残るものの、個としての意識も芽吹き始め、各々のたちに合った暮らしを望む者が増えていったのだ。
 神々の束縛を離れ、人の生活へ。
 それは信仰の減退といってもいい。そして流れのままを受け入れる神や生きるのに厭いた神はそれを歓迎したし、支配者としての権威や古きを重んじる神々は今も事態を難じている。
 それを、巫女らにも自由な時間を与え、神々への信仰も無くさず……と裏で良い塩梅に均(なら)しているのが今の洞主であった。

***

 湯殿を出た少女はそのまま奥社の一角にある仮宿へと連れられていた。
 中はさほど広くはないが、調度も揃い殺風景な訳でもなく煩雑としている訳でもなく落ち着ける。それらの細工や絵付けも小動物だったり花だったりして、おそらく女性向けに造られたのだろうことが想像できた。
 少女は禊が夕餉(ゆうげ)の支度に出ている間に童を誘い、まだ覚束ない足取りながら庭に降りては池の魚を眺めたり、盤や駒など部屋の片隅に用意されていた遊具をいじっては新しい空間を楽しんでいた。
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