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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第3章 世界の理
 本もあったが漢字だけが一面びっちりと埋まるばかりで全く読めない。童に聞いたところ、やはり水蛭子によって読める文体が違うらしく、それら全てを学び書物を改筆する匠もいるらしい。
 ただそれをするのはほとんどが禊や童の育成のためであり、巫女や覡が携わる神事のための所作や詞(ことば)は、口頭での伝承が多いのだという。
「そういうものなの? ……私、もし巫女になったら覚えられるかな」
「でもそういうのは大抵、洞主様やその周りの偉い巫女さんたちがやるから大丈夫。それに、ただの人間に比べれば俺達には時間がたくさんあるから──毎日聞いたり毎日やってりゃ、日常に溶け込んで神事だってことすら忘れてくよ。いただきます、で手を合わせるのとおんなじ」
「そっか……それなら、大丈夫な気がする」
「うん。もし姉ちゃんが禊になっても、今度は一から千まで一ノ兄が仕込んでくれるから大丈夫。そうなったら……頑張ってな」
「それは……大丈夫じゃない気がする」
 ただ話を聞いている限り、最初に洞主が言っていた通り自分が悩む必要はあまり無さそうだった。既にここでは、物事が順当に進むようその機能ができているのだろう。
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