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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第3章 世界の理
 大弟というのはその頃の呼び名だ。程よい歳にもなり大弟を手放したのは百年前だったか二百年前だったか、それでも自身の禊は相変わらず弟扱い。
 この雰囲気もまた懐かしい。
 「この三人が三人だけで揃うのも珍しきこと」
「はい」
禊が中に入ると洞主は楽しそうに笑い、それから大兄に冷たいものをねだった。そして洞主としての威厳を醸すいつもの振る舞いにて、改めて禊と向き直る。
 「新しい姫御は落ち着きましたかえ」
「はい。今は童に任せ、夕餉を。湯殿を出てからは多少足が立つようになり、仮宿では童と共に遊具をご覧になっておりました。湯殿でも話しておりましたし、多少気安いようですが──通常水蛭子が見せる範囲の反応かと」
「うむ──ならばひとまずは安心、といったところであろうか。水蛭子は赤子も同然。童と話し、共に遊びて差し障り無くこちらのことを学ぶ。少し奇異な漂着であったから、気を揉んでいたのだけれど」
洞主もまた、粥を口にした少女を見た時の禊のように息を吐き肩の力を抜く。そこへ大兄が氷の入った茶を置き、洞主は礼とともにその玻璃の杯を手に取った。そして茶をわずかに口に含むと、おもむろに机の引き出しから繻子(しゅす)に包まれた小さな箱を取り出す。
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