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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第4章 底にあるもの
 「巫女になるにしても禊になるにしても、朝が早いことには変わりありません。今のうちから慣らしておかないと、苦労なさいますよ」
「うん……頑張ろうとは思うんだけど……」
「……なるべく昼間起きていられるよう、考えてみましょう」
そうして叱られた子供のように肩を落とす少女に、禊は呆れた素振りを見せながらも冷えた水菓子(くだもの)を摘まませてくれたり、奥社の許された範囲を歩ませてくれたりと、少女が少しずつこちらの生活に馴染むよう気を配ってくれた。
 特に、奥社の巫女や覡達が司る日々の祭祀や、その仕事の一部を垣間見た少女の目はもはや眠気とは無縁のもの。
 水筋や稜線のような抑揚で謳われる詞や奏でられる楽の音は、確かに少女の魂を揺さぶった。
 そして、時には自身の想像が及ばないような光景も──。
「不思議……どうしてみんな、水の上で布を織っているの?」
「あの衣(きぬ)が全て、高天原の神々に献上されるものだからです。あれは物忌み布……手巾(たな)といい、神々の御不浄の部分をお隠しする布なのです。水は穢れを流すものですから、より清浄なものを」
「……」
 その答えに、少女は何を想像したのかほんの少し視線を泳がせ再びその部屋を覗く。
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