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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第4章 底にあるもの
 室内にも関わらず、まるで川のように造られた水路と、その上に渡された棚板の上で糸を紡いだり機織りをする巫女達。
 からからから。
 タトン。とんとん。
 その巫女の指先が成す音が、流水の音をも編み込んでいく。
 (んー……、……。……あれ?)
なんとなく手の動きを真似てみるが、どうにもその規則的な音とは揃わずずれていく。その音と同じように、お喋りをするわけでもなくただ黙々と、一心に作業を続ける巫女達。それこそを仕事というのか信仰というのかは分からないが──。
 そんな中、少女はふと思い付いたように呟いた。
「ねえ禊。ケガレ……って何? あの小さな龍の時も……なんとなく、良くないものだっていうのは分かるんだけど。ちゃんと聞いたこと無かったから……」
「……御令孫が弑(しい)したという蛟のことですね」
「うん……」
禊は少女のその問いに場所を弁え、部屋から離れると仮宿に戻りがてらそれを語る。
 水場から離れると、夏の午後の蒸し暑い空気が一気にその存在を主張してきた。
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