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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第4章 底にあるもの
その禊の言葉に、少女は再び淡島の不思議な摂理を思い知る。人間が神々を強制することはできない。考えてみれば当然のことだった。

 しばらく行くと木立に入り、周りの温度が少し下がる。禊曰く、太陽の光に当たると体の中の巡りが自然に近付くらしいが、それでも夏の木陰とそよ吹く風は気持ちがいい。
 「……じゃあ、話を戻すけど。……人の中の穢れって何? あの龍は……人の欲って言っていたけど」
「……いえ、それはご自分でお考えになった方がよろしい問題かと存じます」
「え?」
そして再び問答を始めようとした少女に、反面禊はもうこの件に関しては何も答えないという態度を見せた。
「どうして?」
「私が言葉で答えるのは容易いですが、与えてもらったものを貪り食らうだけならそれは獣と同じです。それに──貴女は些か粗忽(そこつ)なところがございますが、決して愚かではないようですから。貴女なりの答えをお出しになってみて下さい」
「……うー」
その物言いに、少女は拗ねたように唇を尖らせて見せる。
 他の禊もこんなふうなんだろうかと一瞬心の中で責めるが──湯殿で真っ正面から向き合ってくれた姿が頭に浮かび、きっとこれも必要なこととして律してくれているのだろうと思い直す。
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