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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第4章 底にあるもの
 やがて厨から聞こえてくるやかましい二人の声に、禊も溜め息を一つ吐いてそちらに向かう。
(確かに奔放でいいとは申し上げたが……だが、あれが彼女の良いところなのだろう)
そしてああいう爛漫な巫女の方が、永き時を生き厭いた神々には割合と好まれる。
 ただ、これから先──できる限り彼女が今のまま在れますようにと、禊は神にではなく、誰にともなく祈った。


【2】

 その日の晩は、昼間の暑さを思えば割合と過ごしやすいものだった。
 八百万の神々の膝元にある淡島は、天候という面においては非常に神々の“ご機嫌”の影響を受けやすい。
 それは例えば太陽だったり、雨だったり、風だったり、神々によって異なるが──影響を受けやすい代わりに、淡島の住人達は祭祀と信仰によってその神々の慈悲を乞い、或いは持て囃し、その神威の恩恵を賜って日々の生活を営んでいた。
 ただ今日はどの神々も深く眠りについているようで、淡島の住人達に取っては随分と穏やかな、寝心地のいい夜だった。
 「……ん」
ところがそんなとろけるような闇の中、少女はふと目を覚ました。
 目を覚ましたというより、意識だけが何かの異変に気付いて渋々五感を揺り起こしたような、そんな夢現の様。
「……」
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