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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第4章 底にあるもの
少女の寝返りが増え衣擦れの音がし始めると、禊はすぐに確率が確信に変わったことを悟った。
──あの桜色の香は、水蛭子を“巫女”と“禊”に選り分けるもの。巫女と禊、双方の本来の役割に関係するため必ず使われる──媚薬の一つだった。
そもそも禊となる水蛭子にはその類のものは一切効かない。傍らでうつらうつらしている童も、今までの経験の中でそれが全く効かないことが分かっていた。だからこそ、禊は童の道を狭めないよう他の匠達と同様に、教育も含めて時に厳しい物言いもする。
ただ少女が巫女となれば、禊と童はそのまま生涯彼女の僕(しもべ)となるから、そこは童も喜ぶだろう。禊の一存で断ることもできるが、それをするつもりはない。
「……一ノ弟」
「ん……あ、やべ。寝ちゃってた……」
少女の吐息に甘い声が混ざり始めたところで、禊は童を揺り起こした。
「どっち?」
「巫女の方だ」
「ああ……やっぱりなぁ」
童は目を擦り、ちらりと少女の居る部屋の方を見る。几帳の向こう、更に蚊帳(かや)の向こうで時折漏れ聞こえる声は間違いなく──。
「大兄がまだ起きていらっしゃるだろう。言伝てを」
「分かった」
立ち上がり背伸びをする童の顔は、やはりどこか嬉しそうだった。
──あの桜色の香は、水蛭子を“巫女”と“禊”に選り分けるもの。巫女と禊、双方の本来の役割に関係するため必ず使われる──媚薬の一つだった。
そもそも禊となる水蛭子にはその類のものは一切効かない。傍らでうつらうつらしている童も、今までの経験の中でそれが全く効かないことが分かっていた。だからこそ、禊は童の道を狭めないよう他の匠達と同様に、教育も含めて時に厳しい物言いもする。
ただ少女が巫女となれば、禊と童はそのまま生涯彼女の僕(しもべ)となるから、そこは童も喜ぶだろう。禊の一存で断ることもできるが、それをするつもりはない。
「……一ノ弟」
「ん……あ、やべ。寝ちゃってた……」
少女の吐息に甘い声が混ざり始めたところで、禊は童を揺り起こした。
「どっち?」
「巫女の方だ」
「ああ……やっぱりなぁ」
童は目を擦り、ちらりと少女の居る部屋の方を見る。几帳の向こう、更に蚊帳(かや)の向こうで時折漏れ聞こえる声は間違いなく──。
「大兄がまだ起きていらっしゃるだろう。言伝てを」
「分かった」
立ち上がり背伸びをする童の顔は、やはりどこか嬉しそうだった。