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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第4章 底にあるもの
 というのも少女が“禊”になれば童は不必要で、もう会う機会もほとんどなくなってしまうからだ。
 少女は今まで会った巫女の中でも特に気安いし、良くしてくれた。巫女になれば後は長い間を共に過ごせるから、日常の憂鬱も忘れられそうな気がした。童の世界もいろいろあるのだ。
 「……でも一ノ兄はさ、もう諦めてんだろ」
「……一ノ弟」
「そういうの、一ノ兄らしいって思うけどさ……諦めんなよ」
「…………」
そう言って手燭を持ち駆け出す童を見送り、禊も香炉を片付けようと立ち上がる。
 ……一ノ弟の言葉はとてもありがたいと思う。そう言ってくれるだけで、感じてくれるだけで禊に取っては心が救われる。
 “禊”は巫女や覡の世話人というだけでなく、実は別に本来の役割がある。そしてそれを巫女らに明かすかどうかは禊に一任されている。
 だからこそ──主を大切に思えば思うほど、禊というものは孤独だった。だからこそ、その孤独を理解してくれる者の存在は本当に貴重だった。
 けれどもそれに応えられなかったのは、既に自分が理解しているからだ。今度も多分、自分に取って良い未来は訪れない。
 それを言えばきっと大兄などはそれを誇れと笑う。哀しそうに笑うのだろう。
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