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愛しのキスは蜜の味~sequel【完結】
第20章 迷子のサンタクロース
「何かくれるの?」
「あとでな」
葉瑠とこんなにゆっくり電話するのも久しぶりだな。
徐々に声のトーンも明るくなってきた。
「あとちょっとで着くからな」うん。
予約の時間もだいぶ過ぎた頃…漸く車も流れてきた。
「はあ~!」
さっきから時々葉瑠が大きく息を吐く音が洩れてくる。
どした?なにやってんの……
「へ、ううん何でもない」そうか…
そろそろ店も近い。
「ほらっ……もう見えてきたよ」
遠くに店の灯りが見えてきた。
ぇ?…葉瑠…
車が店に近付くと何故か横の狭い通路から葉瑠が飛び出してきた。
なんでそんなとこから…
バタン…
急いでタクシーを降りて葉瑠の元に駆け寄った。
「鏡也くっ」
「はるっ、なにして……あっ」
もしかして……ずっとここにいたの?
鼻の頭が真っ赤、素手で携帯を握りしめて寒そうに震えてる。
「手袋は?」
「忘れちゃった」
ずっとここにいたの?
中で待ってろって言ったのに……
「お店の人が中へどぞって言ってくれたんだけど」
1人でただ待ってるのは寂しかったか?……
何度も声を掛けてくれるから悪いと思ったらしい
路地に隠れてたって!
葉瑠らしいけど…
また風邪でも引いたらどうすんだよ。
葉瑠は俺を見つめ唇を震わせながら笑ってる。
ギュッ…
「ごめん、遅くなって」ブンブン
健気な葉瑠がいじらしくて店の前にも拘わらず想わず抱き寄せていた。
こんなに冷えて…寒かっただろ。
さっき電話越しに聞こえたのは、きっと手が冷たくて息で暖めようとしたんだな。
俺は葉瑠の両手を握って息を吹き掛けた。
「はあ~はあ~」