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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第4章 エッフェル塔の恋人
「…良かったじゃないか。おめでとう」
少しの間の後、響いて来たのは縣の明るい祝いの言葉であった。
書類を引き出しに戻し立ち上がり、光の方へと近づく。
「…え?」
光は縣を見上げた。
「君とフロレアンはお似合いの恋人同士だ。結婚は自然な流れじゃないか?…まあ、画家になるのを断念するのはもったいないような気はするけれど、ニースに戻ってのんびり絵を描くのも悪くないだろう」
「…縣さん…」
「君の父上も時が経てば、君達の結婚を許す気になるかもしれないし…」
光は思わず縣の言葉を遮る。
「縣さんは、私が結婚してしまっても構わないの?フロレアンのものになってもいいの?」
「…光さん…」
光が琥珀色の澄んだ強い眼差しで、縣を見つめる。
「…私達が、お互い惹かれあっていると思ったのは私の思い違い?」
「…光さん…」
縣が眉根を寄せる。
「貴方の心の中を知りたいの…本当の貴方の心の中を…」
縣は口を開きかけ、しかしすぐに首を振り光に背を向けた。
「…思い違いだよ。君の…」
「…嘘…」
「…私は君のことなどなんとも思ってはいない」
「嘘よ…!」
「…本当だ。…君にはフロレアンがいる。…彼と幸せになりなさい」
「縣さん!」

光が縣の腕に手を掛けた時、密やかなノックの音が聞こえた。
アンヌのやや困惑した声が続く。
「…失礼いたします。あのう…、アンリエット・ド・マレー様と名乗られる方がヒカル様にお会いしたいとお見えになっておいでですが…」
光がはっと振り返る。
「アンリエット・ド・マレー…?」
光の記憶の中にカフェ・ド・ラペで出会った令嬢の顔がようやく浮かんだ。




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