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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第4章 エッフェル塔の恋人
ドアが慌ただしく開かれ、慌てた表情のアンヌが口上を伝える。
「お取り次ぎが間に合わず、申し訳ありません。…マレー子爵様です」
アンヌの後ろから、初老の品の良い紳士が現れた。
カフェ・ド・ラペでアンリエットと共にいた父親である。
マレー子爵は光に詰めよっている様子の娘を認めると、厳しい声をかけた。
「アンリエット!何をしているのだ。お約束もなくロッシュフォール公爵家に無作法に上がりこむなど…!」
「お父様!」
マレー子爵は光と縣に丁重に詫びる。
「申し訳ありません。マドモアゼルヒカル、ムッシューアガタ。…急にパリに行くなどと言い出して家を飛び出したかと思ったら…やはりこちらにお邪魔していましたか…」
マレー子爵はため息を吐いた。
「…お父様!」
「お前が何をしに来たかは分かっている。…フロレアン先生の事だろう?」
「…だって、お父様…!」
マレー子爵はアンリエットの腕を取る。
「帰ろう、アンリエット。…お前がどんなにフロレアン先生を好きでも仕方のないことはあるのだ。…諦めなさい」
「お父様!」
マレー子爵は温厚な顔に寂しげな笑みを浮かべる。
「…申し訳ありません。マドモアゼルヒカル。…アンリエットは歳をとってから授かった子で、つい甘やかして育ててしまいました。…頑固でなかなか諦めることを知りません…しかし、私には愛しい娘です。…アンリエットがフロレアン先生をとても愛していることも痛いほど分かっているのです」
アンリエットが静かに涙を流し始めた。
マレー子爵は優しく娘の髪を撫でた。
「…私はかつて画家になりたかったのですよ。…才能がなくて諦めましたが…。ですからフロレアン先生が我が家にいらして娘の家庭教師を引き受けてくださった時に、先生の才能や人柄…全てに惚れ込んでしまい、もし先生がアンリエットと結婚して我がマレー家を継いでくれたら…と途方もない夢を見てしまいました。…それがアンリエットに伝わったのでしょう。誠に申し訳ない。娘に代わりお詫び申し上げます」
誠実に頭を下げるマレー子爵に光は首を振る。
「いいえ、そんな…」
光はマレー子爵を見つめ、感謝の意を述べる。
「フロレアンをそこまで評価してくださり大切にしてくださり、心より感謝申し上げます。…ですからもうアンリエットさんを叱らないでください」
アンリエットは驚いたように光を見上げ、再び声を放って泣き出したのだ。
「お取り次ぎが間に合わず、申し訳ありません。…マレー子爵様です」
アンヌの後ろから、初老の品の良い紳士が現れた。
カフェ・ド・ラペでアンリエットと共にいた父親である。
マレー子爵は光に詰めよっている様子の娘を認めると、厳しい声をかけた。
「アンリエット!何をしているのだ。お約束もなくロッシュフォール公爵家に無作法に上がりこむなど…!」
「お父様!」
マレー子爵は光と縣に丁重に詫びる。
「申し訳ありません。マドモアゼルヒカル、ムッシューアガタ。…急にパリに行くなどと言い出して家を飛び出したかと思ったら…やはりこちらにお邪魔していましたか…」
マレー子爵はため息を吐いた。
「…お父様!」
「お前が何をしに来たかは分かっている。…フロレアン先生の事だろう?」
「…だって、お父様…!」
マレー子爵はアンリエットの腕を取る。
「帰ろう、アンリエット。…お前がどんなにフロレアン先生を好きでも仕方のないことはあるのだ。…諦めなさい」
「お父様!」
マレー子爵は温厚な顔に寂しげな笑みを浮かべる。
「…申し訳ありません。マドモアゼルヒカル。…アンリエットは歳をとってから授かった子で、つい甘やかして育ててしまいました。…頑固でなかなか諦めることを知りません…しかし、私には愛しい娘です。…アンリエットがフロレアン先生をとても愛していることも痛いほど分かっているのです」
アンリエットが静かに涙を流し始めた。
マレー子爵は優しく娘の髪を撫でた。
「…私はかつて画家になりたかったのですよ。…才能がなくて諦めましたが…。ですからフロレアン先生が我が家にいらして娘の家庭教師を引き受けてくださった時に、先生の才能や人柄…全てに惚れ込んでしまい、もし先生がアンリエットと結婚して我がマレー家を継いでくれたら…と途方もない夢を見てしまいました。…それがアンリエットに伝わったのでしょう。誠に申し訳ない。娘に代わりお詫び申し上げます」
誠実に頭を下げるマレー子爵に光は首を振る。
「いいえ、そんな…」
光はマレー子爵を見つめ、感謝の意を述べる。
「フロレアンをそこまで評価してくださり大切にしてくださり、心より感謝申し上げます。…ですからもうアンリエットさんを叱らないでください」
アンリエットは驚いたように光を見上げ、再び声を放って泣き出したのだ。