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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第4章 エッフェル塔の恋人
マレー子爵とアンリエットは寄り添うように車に乗り、屋敷を後にした。

別れ際、マレー子爵は光と握手をしながら優しく語りかけた。
「…例え、フロレアン先生が我が家を去られようとも私は先生への協力の気持ちは惜しみません。私はフロレアン先生の絵と先生が大好きなのですから…」
マレー子爵の広く温かい言葉に、光の瞳から涙が溢れた。
アンリエットは優しい父親に大切そうに肩を抱き抱えられながら車に乗り込んだ。


縣が居間に戻ると、光は暖炉の前の長椅子に座りぼんやりと赤々と燃え盛る火を見つめていた。
その姿は驚くほど頼りなげで、今にも脆く崩れ落ちそうであった。
縣は思わず、光のか細い肩に手をかけた。
「…光さん、私に出来ることがあったら何でも言ってくれ。…君の力になれるのならば、私は何だってする」
光はゆっくりと振り返り、力なく首を振る。
「…いいえ。何もないわ。…それに…」
哀しげな瞳が縣を見つめる。
「…貴方は私のことを何とも思っていないのだから、中途半端な優しさはいらない…」
「光さん…!」
縣が何か言おうとするのを光は無言で遮り、長椅子から立ち上がった。
そのまま縣の前から去ろうとする光の手を思わず掴む。
…しかし光は縣の方を振り返ることは一度もなく、そのままそっと手を振り切ると、静かに部屋を後にした。

縣は光が出て行ったドアを見つめ、いつまでも立ちつくしていた。
そして縣の胸からは、光の哀しみに満ちた眼差しがいつまでも消えることはなかった。
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