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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第4章 エッフェル塔の恋人
翌日、光はパリ滞在中の父、麻宮侯爵からの電報を受け取り慌ただしく外出した。

麻宮侯爵の滞在ホテル、リッツのティールームに父親の姿を見つけ、光は足早に近づいた。
「お父様、どうしたの?何かあったの?」
麻宮侯爵は娘に座るよう促し、ギャルソンにカフェオレを注文する。
光は麻宮侯爵の様子からただならぬ気配を感じていたので、重ねて尋ねた。
「パパ!ねえ、何かあったんでしょう?」
侯爵はエスプレッソを飲み干すと、重々しく口を開いた。
「先ほど、日本の翠から電報が届いた。…お母様がまた発作を起こして倒れたらしい」
光の顔から血の気が引いた。
「お母様が…⁉︎」
侯爵は苦渋の色を滲ませながら続けた。
「…実は、お母様が倒れたのはこれが初めてではない。…私がフランスに発つ前も発作を起こして倒れたのだ」
「…え?」
光の顔をじっと見つめる。
「…パリでのお前の駆け落ちの一件がどこからか漏れて、口さがない人がお母様の耳に入れたらしい。
…お母様はお前が路頭に迷っているのではないかと死ぬほど心配して、私を責めた。私が厳しい対応をしたから、光が駆け落ちしたのだと。そして自分もフランスに渡りパリで光を探すと言い張り聞かなかったのだ。
私が必死で説得しているときに興奮して…いつもの心臓発作を起こし、倒れたのだよ」
光の唇が小刻みに震えだした。
「…お母様…!」

光の脳裏に、物静かで優しい母の笑顔が浮かんだ。
光は母とは正反対の性格をしていた。
しかし、母は自分にない情熱を持った自由闊達な娘をとても愛し、光がすることは全て肯定してくれた。
光は母が、こんな風に自由に生きたいと願う理想の形の娘だったのかもしれない。
厳しい父親とぶつかればぶつかるほど、母は光を庇い、光の生きたいようにと背中を押してくれたのだ。
その母が、私を心配する余り倒れてしまった…!
光は自分のしたことに初めて激しく後悔した。

「…どうしてこの間の夜会で教えてくれなかったの?」
震えながら尋ねる。
「…お母様が言ったのだよ。お前に心配をかけたくないからと…。だから私はお前を必ず連れ帰ると約束したのだ。…縣男爵に保護されていると、彼と夜会に来ていて、光はとても綺麗だったと伝えた時は、涙を流して安堵したそうだ」
「…お母様…!」
光は流れ落ちる涙を拭おうともせずに、母を思った。
…私のせいだ…私がお母様に心配をかけたから…!
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