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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第4章 エッフェル塔の恋人
「ヒカル!急に何を言い出すんだ‼︎なぜそんな嘘を吐くんだ⁉︎」
光は冷たくフロレアンの腕を振り払う。
「…嘘じゃないわ!本当よ。…縣さんと暮らして分かったの。私はやっぱり贅沢な暮らしじゃないと満足できない女なんだって。…縣さんは私の欲しいものは何もかも与えてくれるの。私には最高のものが似合うから…て。
…父も縣さんのことは気に入っているし…貴方と違って結婚も反対されないだろうしね…。
…私は所詮日本人よ。私は日本で麻宮侯爵家を継がなくてはならないの」
「…ヒカル…」
フロレアンの降ろされた手が小刻みに震える。
光はフロレアンから視線を逸らし、縣に甘えたように抱きつく。
「ねえ、縣さんからも言って。じゃないとフロレアンは信じないみたいだから」
縣は硬い表情のまま、だがはっきりと告げる。
「…ああ、私はヒカルさんを愛している。ムッシューデュシャンにはすまないが、もう私達は愛し合っているのだ…」
光の顎を持ち上げ、唇を奪った。

フロレアンは形の良い唇を噛み締め、ゆっくりと二人に背を向ける。
ドアのノブに手をかけた時、光の声が飛んだ。

「…フロレアン!アンリエットさんと結婚して…!
…貴方をとても愛しているわ…そして一流の画家になって…私の願いはただそれだけよ…」

フロレアンの肩がびくりと震える。
しかし彼は一度も振り返ることなくドアを開け、部屋を後にした。

…遠ざかる足音が夜の静寂に消えた時、光は初めて声を放って泣いた。
縣が優しく光を抱きしめる。
そしてまるで父親が幼い我が子にするように、光の髪を優しく撫で続ける。
「…君は馬鹿だ…」
「…いいのよ…」
「…君は彼を愛しているのに…」
「…私の愛より、彼の将来の方が大事だわ。…私は彼の絵を世に出すために今まで頑張って来たのだから…」
「…君は馬鹿だが…本当にいい子だ…」
縣は光の涙を指で払ってやる。
琥珀色の大きな瞳に哀しみの色が宿っている。
縣の胸はきりきりと締め付けられた。
もう一度、光を強く抱きしめる。
あやすように、背中を撫でる。

縣の胸に押し付けられた光から小さな声が聞こえた。
「…縣さん、もう一つだけお願いがあるのだけれど…」
「何?私に出来ることなら何でもするよ。言ってくれ」
光が瞬きもせず、縣を見つめる。
光の珊瑚色の唇がそっと開かれた。
「…今宵一夜、私とここで過ごして…」





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