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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第4章 エッフェル塔の恋人
光の言葉に縣は息を飲む。
眉を寄せ、苦しげな表情で顔を背ける。
「…それだけは駄目だ…。君はフロレアンをまだ愛しているのに…」
「…お願い…!…私にはもう何もないの…愛する人を失って…希望も失ったわ…。私を一人にしないで…今、貴方にまで去られたら…私は…私は…」
必死で縣の腕を掴む光の白い手の甲に透明な涙が落ちる。
その涙を見た瞬間、縣は押さえることの出来ない激しい情動のようなものを感じ、光を強く抱きすくめていた。
「…分かった…もういい…!もう泣かないでくれ…。光さんの涙を見ると、私はどうしたらいいか分からなくなる…!君の涙は何よりも私を苦しくする…!」
「…縣さん…」
光の小さな顔を縣の大きな男らしい手が包み込む。
「…光さん…私は…」
光のほっそりとした長く美しい指が縣の唇に押し当てられる。
「…何も言わないで…。ただ私を温めて…」
光の哀しみに満ちた、だからこそ透き通るように無垢な瞳が縣を見つめる。
縣は光を黙って見つめ、そっと引き寄せる。
光の柔らかな薔薇の蕾のような唇に唇を重ね、ゆっくりと押し開く。
光の哀しみを癒すように優しく、角度を変えながら舌を絡める。
「…ん…っ…ああ…」
光が耐えきれないように、息を吐く。
くちづけの途中で、琥珀色の瞳を煌めかせながら呟く。
「…何もかも…忘れさせて…」
「…光さん…」
縣は光の手を取る。
「…おいで…」

大きなベッドに、まるで壊れものを扱うように光を押し倒す。
真っ白なシーツの海に散らばる黒い絹糸のような黒髪、練絹のようにしっとりとした白い肌、濃く長い睫毛にはまだ水晶のような涙が絡まっている。
ぞっとするほどに美しい光の姿がそこにあった。
「…綺麗だ…光さん…」
縣は光の存在を確かめるかのように、顔の輪郭を辿り、うなじを優しく撫で、黒いドレスの肩紐を滑らす。
光は緊張からか一瞬震え、縣にしがみつく。
縣は光の髪にキスし、ゆっくりと体重を掛けないように身体を重ねた。
そして再び、丁寧にいたわるようなくちづけを繰り返すと、瞼に唇を落とした。
「…眼を瞑って…何も考えないで…怖くないから…」
光は小さく頷き、縣に身を委ねた。
縣の逞しく美しい成熟した男の肉体と重さを感じながら、無意識に涙を零す。
「…泣かないで、光さん」
…涙で滲んだ光の瞳の中に縣の切ないまでの愛しみの表情が映し出された。











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