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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第4章 エッフェル塔の恋人
「…ジュリアンの機嫌がずっと悪いのですよ。ムッシューアガタ」
優雅にウェッジウッドの茶器にティースプーンで砂糖を入れながら、マダムロッシュフォールは縣にケーキを勧めた。
洗練された所作でケーキを断りながら、マントルピースの前に腕を組んでやや不貞腐れているジュリアンを見た。
「…機嫌なんか悪くないですよ、お祖母様」
明らかに仏頂面で答えるジュリアンに縣は苦笑した。
「私にもそうです。マダムロッシュフォール。ジュリアンは最近はろくに口も利いてくれません」
ジュリアンは美しい形の眉を跳ね上げた。
「当たり前だろ!僕がどれだけ…!お祖母様!お祖母様も聞いて下さい!アガタはヒカルを愛しているのに、簡単に諦めてしまうのです。追いかけようとしないのです!僕は腹が立って仕方がありません!アガタとヒカルはお互いに思い合っているのに!」
子供のように憤慨し、まくしたてるジュリアンをマダムロッシュフォールは宥める。
「貴方は優しい子ね、ジュリアン。…そうね、私もお聞きしたいわ。ムッシューアガタ、貴方はなぜヒカルさんを追いかけないの?」
縣は困ったように微笑み、穏やかに口を開いた。
「私と光さんではお互いを思う気持ちに若干の温度差があるのです。…私はヒカルさんを好きですが、ヒカルさんは…友情だと仰ったのです。…そんなヒカルさんに私の気持ちを押し付ける訳にはいきません。…ヒカルさんはまだ恋人と別れて傷ついているのに…」
マダムロッシュフォールはちらりと縣を見上げる。
「…ヒカルさんが言われたことが本心だと思っていらっしゃるの?ムッシューアガタ。…そうだとしたら貴方は女心を余りお判りではないようね」
「…マダムロッシュフォール…」
縣は戸惑ったように口ごもる。
「女はね、時として本心でないことを言ってしまう生き物なのですよ。…相手の気持ちを思うがゆえに…ね。…私もそうでした。…貴方を見ていると、まるで昔の私を見ているよう…。こんなに年を重ねても…昔の恋は鮮やかに昨日のことのように思い出せるのよ。…不思議なものね…」
マダムロッシュフォールの端正な彫刻のような顔が柔らかくなる。
ジュリアンが目を見開き、マダムロッシュフォールの隣に座る。
「…お祖母様!それはお祖父様ではないよね?」
「…昔昔のお話ですよ…天国のお祖父様も許して下さるでしょう」
マダムロッシュフォールは茶目っ気たっぷりに微笑んだ。
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