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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第4章 エッフェル塔の恋人
…マダムロッシュフォールはまるでお伽話を紐解くように、ゆっくりと話し始めた。
「…私にはロッシュフォール公爵に嫁ぐ前に、密かに愛する方がおりました。我が家の主治医の息子で…彼は私より10歳年上で…優しい人でね、まるで兄のように私を可愛がってくれたの。
…彼は素晴らしい黒髪に碧の瞳をした背が高い…声も美声で…とてもハンサムだったの…」
ジュリアンと縣はマダムの話を微笑ましい気持ちで頷きながら聴く。

「…彼はとても賢くて、父親の後を継いで医師免許も取り、我が家の領地の村では人気の若きドクターだったのよ。
私は幼い時に時々、屋敷を抜け出しては彼の医院に行き、彼の医者ぶりをうっとり眺めたりしたわ。いつも慌てて乳母が探しにきたっけ…。彼はそんな私にその綺麗な眼でウィンクしてきてね。…私は胸がドキドキしてそのまま天国に召されてしまうのではないかしらと思うほど、彼に夢中だったわ」
お転婆でちょっとおませな美少女のマダムロッシュフォールが思い浮かぶ。
「…そうして私も年頃になり、次第に私達はお互いに愛し合うようになりました。
…愛し合うといっても、時々屋敷を抜け出して庭の東屋で、手を握りお互いを見つめあったり…夜の池でボートに乗って彼の腕の中で何時間も月を眺めたり…。私達はくちづけは交わしたけれど…それ以上は何もなかった。彼はとても紳士だったの。…でも、それだけで私は充分幸せだったわ」
ジュリアンがうっとりしたようにマダムを見つめる。
「…ロマンチックなお伽話みたいだ…」

マダムは孫に優しい微笑みを向ける。
「…けれど、私が18の年にロッシュフォール公爵との婚約が正式に整いました。もちろん家同士の結び付きの結婚よ。…貴族の結婚はみなそういうものです。…ロッシュフォール公爵家は私の実家より更に大きな名門貴族…。断るなんて考えもつかぬことでした。
…彼は立派なドクターだけど、平民で…許される関係ではなかったから、誰にも言い出すこともできなかった。
…そんな時代だったのよ。
…私は毎晩泣き暮らしておりました。自分の生まれた家を初めて恨んだわ」
「…お祖母様…」
ジュリアンの美しい眼が曇る。
感激屋のジュリアンはもらい泣き寸前だ。
縣の胸も小さく痛んだ。
…若く美しいマダムロッシュフォールが毎晩、白い寝台で泣き伏す姿が眼に浮かんだからだ。
…彼を愛しているのに…
…誰よりも深く…

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