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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第4章 エッフェル塔の恋人
縣とジュリアンが客間に入ると、フロレアンがすぐさま立ち上がり、そのエーゲ海のように蒼い瞳で縣を見つめた。
フロレアンは落ち着いた色合いのベージュのジャケットにマルーン色のリボンタイを結んでいた。
波打つ金髪が明るく映え、暖炉の明かりに照らされた顔の陰影は優雅なルネッサンス絵画の人物のようで、やはり彼が超一級品の美青年であることを顕著に現していた。
縣はまず、丁重に頭を下げた。
「…先日は大変失礼いたしました。…心よりお詫び申し上げます」
グランドホテルの一件をまだ詫びていなかった。
あの夜、フロレアンはどれほど傷ついて部屋を後にしたことだろう。
謝っても謝りきれない。
フロレアンは穏やかな声で縣を制した。
「…頭を上げてください。ムッシューアガタ。…あの夜のことは貴方のせいではありません。…というか…誰も悪くない…」
縣ははっと眼を見張る。
「…ムッシューデュシャン…」
「フロレアンと呼んでください。…分かっていました。最初から…ヒカルは平気で恋人を裏切るような人ではありません。…ヒカルの最後の叫び声を聞いた時に…全てははっきりと分かったのです」
…「アンリエットさんと結婚して!貴方をとても愛しているわ。…そして一流の画家になって!私の願いはただそれだけ…」
光の心の叫びだった。
「…僕は席を外したほうがいいかな?」
ジュリアンが遠慮勝ちに尋ねる。
フロレアンは静かに微笑んだ。
「ムッシューロッシュフォールもここにいらしてください。お二人に聞いていただきたいのです」
三人はソファに座った。
フロレアンはゆっくりと口を開いた。
「…ヒカルは敢えて私を突き放し、私が画家として真剣に生きる為にあんなお芝居をしたのですね」
「…ええ、貴方を愛しているからこその苦渋の選択だったと思います」
…私の愛より、彼の将来が大事だわ。
私は彼の絵を世に出す為に頑張ってきたのだから…。
光の涙を昨日のことのように思い出す。
「…貴方の絵を世に出すこと…。それが一番の願いだと光さんは言っていました」
フロレアンは懐かしそうに笑った。
「…ヒカルはよく言っていました。…フェルメール、ルーベンス、カラバッジオ…貴方は彼ら以上の画家になれるわ。私がしてみせる…と。…私はそんな彼女にいつの日か甘えきっていたのかも知れません」
…そう、彼女の言葉には力と温かさがあるのだ。
フロレアンは落ち着いた色合いのベージュのジャケットにマルーン色のリボンタイを結んでいた。
波打つ金髪が明るく映え、暖炉の明かりに照らされた顔の陰影は優雅なルネッサンス絵画の人物のようで、やはり彼が超一級品の美青年であることを顕著に現していた。
縣はまず、丁重に頭を下げた。
「…先日は大変失礼いたしました。…心よりお詫び申し上げます」
グランドホテルの一件をまだ詫びていなかった。
あの夜、フロレアンはどれほど傷ついて部屋を後にしたことだろう。
謝っても謝りきれない。
フロレアンは穏やかな声で縣を制した。
「…頭を上げてください。ムッシューアガタ。…あの夜のことは貴方のせいではありません。…というか…誰も悪くない…」
縣ははっと眼を見張る。
「…ムッシューデュシャン…」
「フロレアンと呼んでください。…分かっていました。最初から…ヒカルは平気で恋人を裏切るような人ではありません。…ヒカルの最後の叫び声を聞いた時に…全てははっきりと分かったのです」
…「アンリエットさんと結婚して!貴方をとても愛しているわ。…そして一流の画家になって!私の願いはただそれだけ…」
光の心の叫びだった。
「…僕は席を外したほうがいいかな?」
ジュリアンが遠慮勝ちに尋ねる。
フロレアンは静かに微笑んだ。
「ムッシューロッシュフォールもここにいらしてください。お二人に聞いていただきたいのです」
三人はソファに座った。
フロレアンはゆっくりと口を開いた。
「…ヒカルは敢えて私を突き放し、私が画家として真剣に生きる為にあんなお芝居をしたのですね」
「…ええ、貴方を愛しているからこその苦渋の選択だったと思います」
…私の愛より、彼の将来が大事だわ。
私は彼の絵を世に出す為に頑張ってきたのだから…。
光の涙を昨日のことのように思い出す。
「…貴方の絵を世に出すこと…。それが一番の願いだと光さんは言っていました」
フロレアンは懐かしそうに笑った。
「…ヒカルはよく言っていました。…フェルメール、ルーベンス、カラバッジオ…貴方は彼ら以上の画家になれるわ。私がしてみせる…と。…私はそんな彼女にいつの日か甘えきっていたのかも知れません」
…そう、彼女の言葉には力と温かさがあるのだ。