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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第4章 エッフェル塔の恋人
「…僕はヒカルの優しさにずっと甘えていました。ヒカルがいれば何もいらない、画家になれなくてもいい、絵を認められなくてもいい、…ヒカルと一緒にいたいから彼女を連れて実家に帰ってホテルを手伝うなんて安易な生き方に逃げようとしていたのです。…ヒカルが貴方に惹かれているのも感じていましたし…」
「…それは…」
縣が口籠る。
フロレアンは穏やかな表情を変えずに続けた。
「ヒカルは貴方のところで働くようになってから生き生きとして…更に綺麗になりました。私は…ヒカルを輝かせることが出来る貴方が羨ましかった…」
縣はフロレアンの美しい瞳を見つめながら、言葉を選びつつ口を開く。
「光さんは貴方を愛していますよ。…おそらく今もまだ…」
「…そうかもしれません。…けれど人は変わってゆく…愛の形も対象も…それは仕方のないことなのです。生きているのですから…。私は変わることを恐れていて…ヒカルを失うことを恐れていて…絵を…大切なものを捨てようとしていた。…ヒカルはそんな私を母親の獅子が子供を谷底に突き落とすような気持ちで決断したのでしょう」
フロレアンはジャケットの内ポケットから新聞を取り出した。
…ル・フィガロ。昨日の日付けの新聞だ。
差し出されるままに文化欄の紙面に眼を通して、縣は驚きの声をあげた。
「…応募した絵がル・サロン展で優秀賞を受賞しました。…ヒカルと別れた後に三日三晩寝ずに仕上げました。…これがその絵のポストカードです。マレー子爵が作ってくれました」
その絵を見て、縣は息を呑んだ。
…光さんだ…!
光をモデルにしたと思われる若く美しい女性が窓からの光が降り注ぐ中、裸の背中を見せ、首を捻りこちらを見つめている。
その表情は全てを受け入れるような優しさと慈しみと美しさ…愛に満ち溢れている微笑みを浮かべていた。
見ているだけでこちらの心の中に温かいものが広がってゆくような…全てを赦されるような…そんな「愛の絵画」だった。
タイトルは「belle lumiere-美しき光-」
…美しき光…
光さんの絵だ…!
縣は絵に…絵に込められた思いに圧倒された。
「…僕のヒカルへの愛と感謝を全て込めました。…僕のヒカルへの思いはこの絵に全て注いだので…僕の愛は綺麗に昇華されました」
フロレアンは無垢な笑顔で笑った。
「…この絵と新聞を、日本にいるヒカルに渡してください…貴方から…」
「…それは…」
縣が口籠る。
フロレアンは穏やかな表情を変えずに続けた。
「ヒカルは貴方のところで働くようになってから生き生きとして…更に綺麗になりました。私は…ヒカルを輝かせることが出来る貴方が羨ましかった…」
縣はフロレアンの美しい瞳を見つめながら、言葉を選びつつ口を開く。
「光さんは貴方を愛していますよ。…おそらく今もまだ…」
「…そうかもしれません。…けれど人は変わってゆく…愛の形も対象も…それは仕方のないことなのです。生きているのですから…。私は変わることを恐れていて…ヒカルを失うことを恐れていて…絵を…大切なものを捨てようとしていた。…ヒカルはそんな私を母親の獅子が子供を谷底に突き落とすような気持ちで決断したのでしょう」
フロレアンはジャケットの内ポケットから新聞を取り出した。
…ル・フィガロ。昨日の日付けの新聞だ。
差し出されるままに文化欄の紙面に眼を通して、縣は驚きの声をあげた。
「…応募した絵がル・サロン展で優秀賞を受賞しました。…ヒカルと別れた後に三日三晩寝ずに仕上げました。…これがその絵のポストカードです。マレー子爵が作ってくれました」
その絵を見て、縣は息を呑んだ。
…光さんだ…!
光をモデルにしたと思われる若く美しい女性が窓からの光が降り注ぐ中、裸の背中を見せ、首を捻りこちらを見つめている。
その表情は全てを受け入れるような優しさと慈しみと美しさ…愛に満ち溢れている微笑みを浮かべていた。
見ているだけでこちらの心の中に温かいものが広がってゆくような…全てを赦されるような…そんな「愛の絵画」だった。
タイトルは「belle lumiere-美しき光-」
…美しき光…
光さんの絵だ…!
縣は絵に…絵に込められた思いに圧倒された。
「…僕のヒカルへの愛と感謝を全て込めました。…僕のヒカルへの思いはこの絵に全て注いだので…僕の愛は綺麗に昇華されました」
フロレアンは無垢な笑顔で笑った。
「…この絵と新聞を、日本にいるヒカルに渡してください…貴方から…」