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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第4章 エッフェル塔の恋人
縣はダルタニアン元帥に尋ねた。
「…恐れながら、元帥はマダムロッシュフォールとどのようなご関係でいらっしゃるのですか?」
元帥はお付きの武官の人払いをすると縣と並び、次第に小さくなってゆくカレー港に目をやった。
そして、懐かしむような柔らかい口調で語り始めた。

「マダムロッシュフォール…マドモアゼルリーズの母と私の母は親友同士でね。幼なじみの間柄なのだ。
小さな頃はよくお互いの別荘を行き来して遊んだものだ。…木登り、水泳、乗馬…どれもリーズには敵わなかった。彼女は男勝りで活発で賢くて…そして…天使のように美しかった…」
向かうところ敵なしと称されるフランス屈指の元帥の横顔に夢見るような表情が浮かぶ。
「…私は幼い頃は虚弱体質でね。身体も小柄で…軽い吃音もあったから…常に人の輪から離れて1人でいるような少年だった」
縣は目を見張る。
「信じられません!ダルタニアン元帥はどなたより頑強で…お話も滑らかで雄弁でいらっしゃいます」
元帥は手摺に頬杖をつきながら、静かに笑う。
「…ある夜…14歳の時だったかな…。
リーズの屋敷で舞踏会が開かれた。私は…ダンスも人と話すのも苦手だったから、1人バルコニーでリーズの犬と遊んでいた。他の子供たちは、舞踏室で皆一人前に女の子達を誘ったり、お喋りを楽しんだりしていた。
…リーズはそんな子供たちの中でも、誰よりも美しく、華やかで、輝いていた。…リーズの周りにはダンスを申し込む少年達で一杯だった。…私が入り込む隙などないほどに…。私は…彼らを羨ましく思いながら…しかし中に入れないでいた」

「海の獅子」と評され、恐れられるフランス海軍最高位の元帥の少年時代とは思えなかった。
「…そうして暫くした時のことだ…。リーズが私の目の前に現れた。…リーズはミルクのように真っ白なふわふわしたドレスを着て、金色の髪には美しい紅い薔薇を挿していた。…私にはお伽話の王女様に見えたよ」
縣は微笑みながら頷く。
美しい幼なじみ…。
眩しくて、誇らしい、少年の憧れのマドモアゼルリーズ…。
「…リーズは突然私に手を差し出した。そして…私と踊ってくださらない?ファビアン・ド・ダルタニアン…と。…私が尻込みしていると、リーズは強引に私の手を取り、にっこり笑ってこう言った。…私は貴方と踊りたいの。女の子に恥をかかせないでね…と、あの美しい目でウィンクした」

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