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小悪魔な狼
第1章 一話 翻弄

「……あんまり、意地悪しないで……」

 私は我慢できず、そう漏らした。自分でも情けなくなるほど弱々しい声だ。
 ああ、とうとう言ってしまった。こんなことを願ったところで事は好転しない。むしろ、逆効果だ。

「……先輩はさ、普段は綺麗でかっこいい人が別人みたいになっちゃったら、どう思う?」
「え?」

 唐突な質問に顔を上げれば、案の定、宮地の表情が変わっていた。それはまるで、獲物を前にした獣のようだ。

「俺だったら興奮する。もっとめちゃくちゃにして、汚してやりたい」
「……っ!」

 いわゆる“小悪魔”である宮地の中に、“男”としての陰を見た。蠕動が這い上がり、冬の空気に冷やされた時のように、堪らなくぞくぞくとする。
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