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小悪魔な狼
第2章 二話 オナニー

◇◆◇
宮地と出会ったのは、高校三年の時だった。
あれは、ある初夏の日のこと。私は午後一番の授業をエスケープし、一人、図書室へとやってきていた。
昇降口の正面、別館の二階にそれはあった。剥き出しのコンクリートはひび割れと雨染みが目立ち、古ぼけた印象を与える。
ダン、ダンというピアノの激情を通り抜け、急かす秘所を焦らすようにゆっくりと階段を上がれば、薄暗い踊り場に辿り着く。左手には、ところどころに蜘蛛の糸をぶら下げた扉。その中心に真新しい画用紙が貼られており、そこには子供の書くようなたどたどしい文字が並んでいた。
「失礼しまぁす……」
キィ、と軋んだ扉の向こうへそっと足を踏み入れる。
微かに聞こえる旋律を除けば、早朝、雪の降った後のような静けさ。人の気配は無く、窓から差し込む陽光だけが棚の手前で足踏みをしていた。

