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小悪魔な狼
第2章 二話 オナニー
 目蓋の裏に林くんがいるような気がした。
 彼は無口な人だが、文学について語る時は饒舌になる。童貞で、かつ、異性と手を繋いだ経験すらないであろう彼は、なぜか他人(ひと)の官能を擽るのが上手かった。



 慎ましく彼女を守っていたものは、はらりと落ちて、桃のように赤みを帯びた白肌が露わになる。カーテンの隙間から差し込む陽光が、それをよりいっそう輝かせていた。
 いやに女を感じさせる、細い首筋。舌をせり上げれば、なめらかな口溶けがして、僕の中に一つの欲望が生まれた。
 彼女を支配したい。そうして、僕なしには生きられない体にしてやる。
 尻を、痴漢がそうするようにいやらしく撫で回せば、扇情的な吐息が耳を擽る。吸いつくような柔肌。餅のように若々しい弾力。
 僕のそれはのっそりと頭を擡げ、ピンと天を向いてそびえ立った。その先端にじんわりとした熱が広がって、尿にも似たにおいが鼻をつく。
 ああ、君は罪つくりな人だ。こんなにも僕を滾らせて、火をつけて、簡単に煽る。無自覚などとは言わせない。君のたわわに実った瑞々しい果実は、豆腐を揺らした時のように、ほら、そうやってまた、僕を酔わせるのだから。
 もぎ取るようにしてやれば、指の間からたっぷりと果肉が溢れる。そのまま大きく円を描けば、彼女はシーツを搔きむしり、体を仰け反らせた。
 ほんの少し力を入れただけで、綿菓子のように潰れてしまうそれ。僕がこれまで柔らかいと認識していたものは、一体なんだったのだろうか。



 いつかの林くんの言葉を思い出しながら、私はそのとおりに自分を慰めた。
 この手は、林くんのそれであり、舌であり、時には陰茎でもあった。
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