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小悪魔な狼
第1章 一話 翻弄

◇◆◇
「ねぇ、先輩」
しっとりとした声が耳に落ちた。振り返る隙すら与えず、その声の主は私に覆いかぶさった。
有無を言わせず、ぐい、と肩を掴まれて、私は仰向けになる。見慣れた天井は彼の端正な顔によって遮られた。
「俺、最低かなぁ」
生クリームよりも甘ったるい、女みたいな声。男らしく低い声ではあるのだが、彼のそれは、腰をくねらせて媚びる女のようだった。
「そうね。最低よ」
「ひどいなぁ」
彼は屈託なく笑った。その笑顔からは、罪の意識などこれっぽっちも感じられない。
この男――宮地 涼はとにかく最低なのだ。今朝、彼は一ヶ月付き合った彼女をふった。私とヤりたい、ただそれだけのために。どうせ遊びなのだろう。だったら――。

