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それを、口にすれば
第10章 それぞれの想い
二人の出会いは約三年前に遡る。

理沙子の父親は、主に外食産業やホテルなどの企業買収で以前から名の知れた人物だ。
そしてその世界に足を踏み入れてまだ数年という結城は、本来なら対等に渡り合えるような立場ではなかった。

しかし、外食産業などに加えて理沙子の父親が苦手としていたIT系の企業買収で強みを発揮し、結城は財界の人間から一目を置かれる存在となる。

理沙子の父親も初めは相手にしていなかったが、幾度か顔を合わせるうちに、結城の度胸と物おじのしない態度をいたく気に入り、まるでゲームのように……けれど真剣な表情で、『一人娘の人生を君に託したい』と申し入れて来たのだ。

その少し前から、パーティーの席などで理沙子とは面識があり、美しい女性であることは知っていた。

あの女性であれば不都合は無いだろう……と、結城はすぐに快諾した。理沙子の父に恩を売ることは損ではなかったし、外見の美しい理沙子は仕事のプラスになることはあっても邪魔になることはないだろうと思えたからだ。

それに、初めて本気で付き合った女性が一方的に別れを告げて姿を消したばかりで……結婚や女性に対する夢や理想がもともとあまり無かった結城は、やはり愛情などは信頼できないという思いを強くしていた。

理沙子との結婚話は結城にとって契約のようなものだったが、結城は理沙子を尊重し、気配りを忘れたことは無い。二人は誰もが羨む似合いのカップルに見えた。

しかしそんな二人の夜の生活は一年ほどで破綻する。
もともと、お互いに相手を支配するタイプのセックスを好んだ二人。
満たしきれない思いを家庭の外で解消する様になると、二人の心までどんどん離れて行った。

しかし、結城の隠された趣味を理沙子が知ってからは、身体の関係は無くても夫婦関係は上手くいくようになった。
普通では考えられないことだが、スワッピングや乱交パーティー、そして凌辱行為。
全てお互いの了承のもとに二人で参加した。

そしてそれらの味を理沙子はすぐに覚え、結城以上にのめり込んでいったのだ。
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