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それを、口にすれば
第11章 求め合う心
車は静かに走り出す。

何をしているのか、後部座席からは時折クチュクチュといやらしい音が聞こえて来たが……結城がカーステレオを弄ると、小気味よいジャズピアノの調べがそれを消し去ってくれた。

「突然のことで悪かったね」

結城もやはり昨晩になって初めて理沙子から旅行のことを聞かされたのだったが、理沙子をむやみに刺激したくない思いと、優雨を側から離さなければ特に問題は起きないだろうという考えから特に反対はしなかったのだ。

それに結城にとっても、優雨との初めての旅行は非常に魅力的なものだった。

「急なことで驚いたが……宿は私もよく知っているところで、内容は保証するよ。安心して……ゆっくり羽を伸ばすといい」

やはり結城は優雨の不安も感じ取ってくれていたらしい。
良介や理沙子の手前か、細かな説明は無かったが……こうして顔を合わせてみると、何も気になることはない。

「……はい、大丈夫です」

ただ結城を信じていればいいのだと改めて思い、優雨は窓の外の景色に目を移した。

遠くの山裾には白い梅の花が淡く浮かんでいるように見える。
春がもうすぐそこまで来ているのだ。

これから結城と過ごせる時間を思い、優雨は自然と温かな気持ちになっていた。
しかし……

「……良介さん、シートベルトを締めてもらえますか? ほら、あの辺りにも警察が立っているかもしれない……最近はうるさいですからね」
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