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それを、口にすれば
第3章 淫らな食べもの
今日も、妻二人はキッチンで夕食の準備を、夫二人はリビングで何やらパソコンをいじりながら、いつもの週末を迎えていた。

理沙子は普段料理をほとんどしないため、いつしか優雨が料理担当のようになっている。
優雨はいつものように、自宅のキッチンで作った料理を簡易容器から結城家の食器に盛り付けていた。

家から食器を持参しないのは、結城家にはまるで骨董品のような陶磁器や、目にも美しい洋食器の最高級品などが数多くあるからだ。
いわゆる家庭料理も、結城家にある古い伊万里の皿に盛ると高級店で出された一品のように見えてくる。

『こういったものは使ってやってこそ味が出るんですよ。優雨さんの美味しい手料理に彩りを添えられるなんて、器冥利に尽きるというものです』

……などと結城はいつも言ってくれるが、美術品のような器たちを使用することにはどうしても気後れしてしまう。
それでも、腕によりをかけて作ってきた料理が生まれ変わったように見えるのは、優雨にとってやはり嬉しいことだった。

「優雨が料理上手でほんと助かるわ。私は……これだけっ」

高価そうな洋食器に美しく盛られたチーズとサラダを、理沙子がカウンターに置く。

「ううん。こちらこそ、いつも美味しいワインをご馳走になっているんだもの」

ワインは好きだがたしなむ程度で、その銘柄などには詳しくない優雨だったが、結城が勧めてくれるワインはいつも高級そうなものに感じた。
それこそ、優雨の家庭料理には不釣り合いなくらいの……。

「これでも少しはやってみたことあるのよ、料理。でも結城は外食ばっかりだし、結局レディ・メイドの方が百倍美味しいしね~あはは」

優雨はあまり知らなかったが、高級な店で販売している冷凍食品などのレディ・メイド――すでに調理された料理をレンジでチンするだけ……といった料理の質はかなり向上しているらしく、理沙子はいつも愛用しているとのことだった。
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