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それを、口にすれば
第12章 被虐の味
ビニールの覆いが取られると、宴会場の空気が一気に感じられる。
この状況にパニックになりそうになる良介の口を、理沙子の唇が包み込んだ。

「大丈夫よ……」

目隠しを外されるとそこは少し薄暗い場所で、良介はすぐに目が慣れて来た。

「ここは……」

あろうことか、自分の会社の社員旅行で使っている宴会場の端の、幕が下りた舞台の上にいるのだ。

幕は厚く、光を少しは通すが向こうの様子が見えることはない。

しかし良介は台車の上で股間を晒したまま、会社の人間と一緒にいるのだった。
ただ一枚の布を隔てて……。

社員旅行の目的地からほど近い温泉地に来ているのはもちろん知っていた。

しかし、社員旅行については日程以外のこと……場所についてなどは理沙子にも誰にも言った記憶が無いのに、どうしてこんな場所に自分はいるのだろう。

分からないことが多すぎて、声を出さないという命令を忘れ口を開こうとする良介の股間が軽く足で蹴られる。

(あっ……)

この場所に着いてからすっかりしぼんでいたその場所が再び硬くなるのは一瞬のことだった。

「社長は余興とか嫌いなのよね? だからこの幕は絶対上がらない……違う?」

そんなことまで理沙子はどうして知っているのだろう。

……もちろん、そんなことを調べ上げるほど自分のことを大切に思っているからに違いない。

(俺のことがそんなに……)

良介は驚きも忘れて再び興奮してきた。

もしかして……ここでプレイをするのだろうか。
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